相続法大改正(その1:自筆証書遺言の方式緩和)
こんにちは。
新潟県三条市のひめさゆり法律事務所です。
2018年7月6日、相続法を大改正する内容の法律が成立しました。相続法の大改正は、1980年以来、なんと約40年ぶりとのことです(1980年というのは、石川・滝沢も生まれる前です!)
これから、このブログを使って、改正の内容を少しずつ紹介していこうと思います。
第1回目は、テレビドラマなどでおなじみ「遺言」に関する改正です。
遺言には、次の3種類あります。
① 自筆証書遺言
② 秘密証書遺言
③ 公正証書遺言
今回、この3種類のうち、①自筆証書遺言を作成する手間を簡単にする内容の改正が行われました。
これまで、自筆証書遺言を作成するためには、遺言を作成する方自身が、全ての内容を手書きで作成する必要がありました。つまり、パソコンやワープロを使って自筆証書遺言を作成することはできませんでした(旧民法968条1項)。
遺言の全文を手書きで作成しなければならないとなると、特にお年寄りの方の場合、大変です。また、不動産をたくさん持っていた方など、相続財産の内容が多い方で、各財産についてそれぞれ別の人に相続させたいと考えていた人は、ひとつひとつの財産を細かく手書きする必要があり、特に面倒でした。
自筆証書遺言を作成するためのこのような労力の大きさが遺言を作成することの妨げになっているのではないか、という声もありました。
そこで、今回、自筆証書遺言であっても、相続財産目録の中身については手書きでなくてもよいという改正が行われました(新民法968条2項)。
1.パソコンでの財産目録作成
「手書きでなくてもよい」の代表例といえば、パソコンやワープロを使った財産目録の作成です。
たとえば、遺言書の本体部分に「長男である滝沢亮一に別紙1の不動産を相続させる」と手書きし、別紙1として、不動産の住所や家屋番号などをパソコンやワープロ書きで作成することが可能になりました。
2.通帳のコピーを財産目録に
また、パソコンやワープロという「手を動かして作成したうえでの」財産目録でなくても問題ありません。
1つの例として、預貯金の相続であれば、通帳のコピー自体を財産目録とすることができます。たとえば、遺言書の本体部分に「次男である滝沢亮二に別紙2の預金を相続させる」と手書きし、その預金通帳のコピーを別紙2とする自筆証書遺言も作成できるようになります。
3.登記を財産目録に
もう1つの例として、不動産の相続であれば、その不動産の登記事項証明書自体を財産目録とすることができます。たとえば、遺言書の本体部分に「三男である滝沢亮三に別紙3の不動産を相続させる」と手書きし、その不動産の登記を別紙3とする自筆証書遺言も作成できるようになります。
4.新しい自筆証書遺言のサンプル
新しい自筆証書遺言とその財産目録については、法制審議会(相続関係)部会第25回会議(平成29年12月19日)開催で配布された遺言書(サンプル)がわかりやすい例かと思います。
5.ポイント
この新しい方法で自筆証書遺言を作成する場合においては、注意点が3つあります。
- 手書きで作成しない財産目録の1ページごとに、遺言者の署名と押印が必要になります。財産目録を両面印刷した場合には、表面・裏面のそれぞれに署名と押印が必要になります。
- この財産目録に押す印鑑は、自筆証書遺言の本体部分と同じ印鑑を使うようにしてください。
- この自筆証書遺言の作成手続緩和は、2019年1月13日以降に作成された自筆証書遺言が対象となります。2019年1月12日までに作成する自筆証書遺言は、財産目録部分も含めて全て手書きでなければなりません。
財産目録を複数ページ作成する場合で、そのうちの1ページでも署名や押印を忘れたときには、遺言全体が無効になるおそれがあります。十分注意してください!
第2回は、法務局での自筆証書遺言保管制度の新設について紹介します。
相続法大改正紹介シリーズ
第1回:自筆証書遺言の方式緩和
第2回:自筆証書遺言の法務局での保管制度
第3回:配偶者短期居住権 Part 1