相続法大改正(その7:配偶者居住権 Part 2)
こんにちは。
新潟県三条市のひめさゆり法律事務所です。
相続法大改正を紹介するシリーズの第7回目は、第6回に引き続き、配偶者居住権の紹介です。
今回は、配偶者居住権の期間や、配偶者居住権の登記などについて説明します。
3.配偶者居住権の存続期間
配偶者居住権は、基本的には、遺された奥さんが亡くなるまで存続します(新民法1030条本文)
ただし、配偶者居住権を設定する根拠となったもの(①遺産分割協議、②遺言、③死因贈与契約、④家庭裁判所の審判)によって、それよりも短い期間とすることが定められた場合は、奥さんが亡くなるまでの期間ではなく、その短い期間だけとなります(新民法1030条ただし書き)
4.配偶者居住権の登記
(1)建物所有者の登記義務
配偶者居住権の対象となる建物の所有者(例:建物を相続した子ども)は、遺された奥さんに対し、配偶者居住権の設定登記を具備させる義務を負います(新民法1031条1項)
(2)登記の効果(新所有者との関係)
配偶者居住権の登記完了後に対象建物の所有権を譲り受けた者が、遺された奥さんに対し「私が新所有者だ。こんな配偶者居住権なんて認めないから、出て行ってくれ」と主張したとしても、認められません(新民法1031条2項・605条)
これを裏返して説明すると、遺された奥さんが配偶者居住権の登記を行わなかった場合、遺された奥さんは、新たな建物所有者(例:建物を相続した子どもから所有権を譲り受けた第三者)から追い出される可能性があります。
(3)登記の効果(第三者との関係)
遺された奥さんは、配偶者居住権の登記をすることにより、次のような第三者に対しても、妨害をストップするよう請求することができます(新民法1031条2項・605条の4)
① 遺された奥さんによる対象建物の占有を妨害をする第三者に対する妨害停止請求
② 対象建物を不法占有している第三者に対する建物返還請求
相続法大改正(その8:配偶者短期居住権 Part 3)では、配偶者居住権に基づき建物を利用する配偶者の義務や、建物の修繕費や固定資産税の負担などについて紹介します。
相続法大改正紹介シリーズ
第1回:自筆証書遺言の方式緩和
第2回:自筆証書遺言の法務局での保管制度
第3回:配偶者短期居住権 Part 1
第4回:配偶者短期居住権 Part 2
第5回:配偶者短期居住権 Part 3
第6回:配偶者居住権 Part 1
第7回:配偶者居住権 Part 2